弁護士のメモ帳

2025/07/04 再生の現場から「再生計画案の記載内容」

 弁護士のメモ帳は久しぶりです。最近、ある書籍(共著)の執筆に関連して、事業再生計画書の記載内容を検討する機会がありました。
2300字程度でまとめたものを備忘録として残します(今後修正の可能性があります)。中小企業ガイドラインにも言及するものです。

1 再生計画案の作成目的

 中小企業活性化協議会の再生支援における事業再生計画案(以下「再生計画案」といいます。)の作成目的は、経営困難な状況に陥った中小企業が、事業再生を実現するための措置を明示して専門家に検証材料を提供し(Q81参照)、最終的には対象債権者が納得して金融支援を行う基盤を整えることにあります。中小企業ガイドラインにおける再生計画案も同様の目的です(基本要領別冊2Q&A62参照)。本稿では、債権放棄の要請(直接債権放棄又は第2会社方式による実質的な債権放棄の手法を指します。)を含む再生計画案を説明します。

2 再生計画案の記載事項の概要

中小企業活性化協議会における再生計画案は、自助努力が十分に反映されたものであるとともに、①前提事情(企業の概況、財務状況の推移、実態貸借対照表、経営が困難になった原因)、②事業再構築計画の具体的内容、③事業及び財務状況の今後の見通し、④資金繰り計画、⑤債務弁済計画、⑥金融支援の要請内容、⑦保証人の資産と負債の状況、⑧数値基準適合性、⑨経営者・株主責任の明確化、⑩債権者間の衡平性、⑪経済合理性、⑫地域経済への影響(必要に応じて)を記載します(基本要領別冊2、2⑸①~⑨)。

上記①の前提事情に関しては、事業及び財務DDの調査結果を引用し要約して記載します。それ以外の事項に関しては、個別事案の内容や、自主再建型・スポンサー再生型等の違いに留意して記載します。

 中小企業ガイドラインも、再生計画案の記載事項に関し、基本要領と同様の記載事項を定めています(中小企業ガイドライン第三部、4⑷①)。

3 再生計画案の記載事項の要点 

 再生計画案は、上記2の記載事項をふまえ、事業及び財務DDの調査結果等に基づき記載します。以下、要点を示します。

⑴ 事業再生の意義

 事業再生の意義は、対象債権者の納得を得るうえで重要であり、例えば、希少性・特殊性のある事業の社会的必要性、取引先の連鎖倒産の回避、地域の基幹産業の維持、雇用の確保・維持などが挙げられます。

⑵ 事業再生スキームの概要

 自主再建型の場合、事業再構築計画(戦略的な方向性)の具体的施策(アクションプラン)が計数計画(売上、利益、資金繰り等)に与える影響を財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)で示し、今後の事業見通しを記載します。

 スポンサー再生型の場合、スポンサーによる事業再生となりますから、選定の必要性、選定の経緯、契約の内容、提示額の合理性、支援能力等を記載します。

⑶ 弁済計画

ア 弁済計画の内容 

弁済計画は、弁済原資の算定過程を明確にし、対象債権者ごとの弁済額及び債権放棄額を記載します。債権放棄の対象は担保等により保全されていない非保全債権であるため、担保等の評価額が重要です。

自主再建型の場合、前述の計数計画等に基づき計画期間における弁済計画とします。なお、債権放棄額の算定において事業価値を参照することがあります(宮原一東『再生・廃業手引き』p289)。

スポンサー再生型(一括弁済)の場合、譲渡対価や旧会社に残置された資産等から、担保等により保全された債権(保全債権)、優先債権(公租公課、労働債権等)、手続費用等を控除した残額を非保全債権の弁済原資とします。

 イ 衡平性 

 弁済計画は、債権者間で平等であることを旨とし、債権者間の負担割合は衡平性の観点から個別に検討されます。

 ウ 数値基準適合性

 自主再建型の場合、財務三表によって、基本要領の数値基準(①3年以内の黒字化②5年以内の債務超過解消③計画終了年度の有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以内)を示します。

 スポンサー再生型(一括弁済)の場合、スポンサーから事業計画の提供を受けることが困難な事例では、対象債権者と協議のうえ、代替的に、定性的な事情等(スポンサーの属性、事業規模、資金力等)による実行可能性の説明により、数値基準を省略することが許容されます。

⑷ 実行可能性

 前述2の基本要領には記載されていませんが、二次破綻の防止や、専門家の検証の観点から(基本要領別冊2、2⑹②ロ)、実行可能性を充たす再生計画案を示します。

 自主再建型の場合、前述の計数計画等は実行可能性を充たすものとし、再生計画の管理方法(モニタリング等)を記載します(基本要領別冊2、4)。

 スポンサー再生型の場合、例えば、スポンサーの資金調達能力等も可能な限り記載します。

⑸ 経済合理性

 再生計画案による弁済が破産手続で保障されるべき清算価値よりも多くの回収を得られる見込みがあること等を記載します。比較対象である清算価値等の算定は財務DDで行いますが、誤り等がないようドラフト作成時点から確認します。

⑹ 責任論

 株主責任、経営者責任、保証債務の整理方針等を記載します。

保証債務の整理は、原則として主債務と一体で行い、保証人の財産の状況、弁済計画、保証債務の減免の内容等を記載します(経営者保証ガイドライン7⑵イ、7⑶④)。また、保証債務履行により生じる、主債務者に対する求償権の放棄等の方針も記載します(中小企業ガイドラインQ&A93参照)。

⑺ 対象債権者に対する依頼事項

 前述2の基本要領には記載されていませんが実務上は重要であり、対象債権者の理解と齟齬がないよう詳細に記載します。

 

(福島直也)

2022/04/06 女性のためのほっとカフェ開催報告

 コロナ禍で孤立する女性を支援するために、令和3年12月から令和4年2月にかけて、佐賀県内77か所で、女性のためのほっとカフェが開催されました。
 私がメンバーになっているDV被害者支援の民間団体であるコーリング佐賀も小城市のほっとカフェを担当し、無事 り終えました。
 私は、弁護士として、無料相談を担当して、お手伝いしました。
 ほっとカフェの会場では、生理用品の無料配布とともに、コーリングのメンバーからお菓子や食料の無料提供もされました。 お子さんのいる方は、お米やレトルトカレー、うどんなどの麺類など、「子どもがたくさん食べるので、すぐなくなるんです、助かります」と、喜んで持って帰られました。フードバンクは初めて関わったのですが、こんなに喜んでいただくと、なんだかこちらも嬉しかったです。
 困りごとのある方が、相談のあとに、フードバンクでお土産があると、心も温かくなって、元気が出て帰られるので、いい取り組みですね。
 このような支援には、これからも関わって行きたいと思います(福島和代)

2020/04/13 法廷弁護技術研修を受講しての感想

 3月20日(土)、21日(日)に開催された法廷弁護技術研修に参加しました。法廷弁護技術研修とは、モデル事案を用いて、受講者自身が刑事裁判の実演を行う研修です。
実演内容はカメラで録画され、実演後に自身で映像を確認しながら指導を受けます。映像を見て初めて気づいた自分のくせもありました。
講師陣の的確なアドバイスは、刑事弁護のみならず、あらゆる訴訟活動に活きる貴重な財産となりました。(西田裕太朗)

2017/12/31 中小企業診断士試験合格のご報告

1226日に中小企業診断協会のHPで最終合格者が発表され、
 本年度の重点取り組み事項であった中小企業診断士試験にストレート合格致しました。
 中小企業診断士はコンサルタントの国家資格で、その試験は中小企業支援法第12条に基づく国家試験です。
 弁護士業界のコンサルタントに対する一般的な感覚は、良く言って「玉石混交」というあたりかと思います。
 もっとも、私は、中小企業再生支援協議会の案件などを通じて、中小企業診断士の方々の的確で誠実な姿勢を目にすることが多く、興味を持っていました。
 もう一歩業務のレベルを上げるため診断士の試験を受けてみようと思ったのが、受験のきっかけです。
 平成302月から実務補習を行い4月に登録予定です。
 新しい世界にチャレンジして、さらに知見を高めたい。
 平成30年は、その第一歩です。(福島直也)

2017/1/20 裁判員裁判経験者交流会

1月20日に佐賀地方裁判所で開催された裁判員裁判経験者交流会に、
当事務所の原口が佐賀県弁護士会の代表として参加しました。